2015年10月1日代表質問内容

2015年10月1日代表質問内容

１　ワーク・ライフ・バランスの充実による晩婚化・晩産化対策の推進について

（１）若い女性がバランスの取れたライフデザインを描くための環境整備

【口述内容】
　1つ目の質問は、「ワーク・ライフ・バランスの充実による晩婚化・晩産化対策の推進について」です。その1つ目「若い女性がバランスの取れたライフデザインを描くための環境整備」について質問します。
　現在上程中の地域創生戦略（案）の基本的な目標のトップに掲げられている「人口対策」のうち、とりわけ「自然増対策」の「少子化対策」についてですが、「2015～2019年の5年間で22万人の出生数」、「毎年44,000人の出生数の維持」という目標ですが、出産可能年齢の女性の減少が進む中で、この目標は本当に達成できるのかと、私は感覚的に疑問を持ちました。44,000人の出生数というと、簡単に言えば約44,000人の女性が妊娠をし、出産することになります。総務省の統計によると、2014年の兵庫県内の出産可能年齢の女性は116万8千人で、出生数は44,352人でしたので、約3.8%の女性が妊娠出産をしたということになります。5年間の目標22万人、年44,000人の出生数を維持するには、県ビジョン課によると、2020年の出産可能年齢の女性は約110万人とされていますが、その4.0％の女性が出産することが目標となります。現在よりも0.2％増の目標であり、それ以降も出産可能年齢の女性の減少が進むと予想されていますので、妊娠出産をする女性の比率を4％以上に高めていかねばなりません。
　ご承知のように、出生数の目標を達成するためには、子どもが欲しいと思う気持ちを今よりもさらに高めるということをはじめ、子どもを持つことに対する不安を解消すること、また経済的不安を軽減すること、働く環境の不安を解消すること、安心して子育てできる環境を整えることなど、妊娠・出産・子育てに明るい未来を感じ、総合的に安心の体制が今まで以上に整っていなければなりません。
　それでは、これから妊娠・出産をする可能性の高い今の若い女性の想いや現実はどうなのでしょうか。
　私はこの13年間で、約130名の議員インターンシップの大学生を受け入れてきました。女子学生たちと就職や仕事、結婚、出産についての将来展望について話すことがありますが、彼女らは結婚、妊娠、出産を意識はしているものの、それよりもまずは就職すること、そして働いて認められることが当面の大きな課題だと考えているように思えました。現代の多くの女性にとって、そう考えることは自然なことなのかも知れません。しかし、仕事を優先することは晩婚化や晩産化に至る第一歩ではないか、これで良いのだろうかと感じることがありました。
　ご承知のように、女性にとって妊娠・出産に適した時期というものがあります。いくら時代が変わろうとも、人間の体は晩産化に対応してくれるものではありません。仕事、結婚、妊娠、出産という大イベントを若い時期に一気に迎える女性にとって、20代を中心とした大切な時期を、不安を感じることなく迎えて欲しいと私は願っています。
　現代の若い女性には、ひょっとするとまだ妊娠、出産に関するリスクなどの知識と教育が足りないのかも知れません。その充実を図るとともに、我々は「若い女性が、若い時期に」バランスのとれたライフデザインが実現できるような社会を整えてあげるべきではないでしょうか。
　「ワーク・ライフ・バランス」は社会に浸透してきています。しかし、若い女性に対する「ワーク・ライフ・バランス」の取組状況の発信など、まだまだ不足していることもあろうかと思います。今一度、「若い女性」の「若い時期」についてどうあるべきかを考え、さらなる「ワーク・ライフ・バランスの環境整備」に取組むべきではないかと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

【井戸知事答弁】
　若い世代、特に若い女性の将来の結婚、出産、子育てと仕事との両立を目指して、男女がともに協力し、家庭を支えていく意識を高めていかなければならないと考えます。このため、本県では、従前から新ひょうご男女共同参画プラン21におきまして、仕事と生活の両立支援について、仕事と生活センター等を中心に、職場環境の改善やその普及啓発、さらには男性の働き方の見直しや意識改革に取り組んできました。
　具体的には、まず、仕事と生活の両立や子育て支援に積極的な企業との協定を締結し、協定企業に設置された推進員の活動を支援しております。第二に、ワーク・ライフ・バランスに関するワンストップ相談や研修等を実施しています。第三に、先進事例の紹介や各種セミナーの開催を行っています。特に先進事例の紹介は、このような取組みに対しては非常に意味があると考えています。第四に、男性向けのフォーラム等の開催を行い、男性の意識改革を促進しています。第五に、育休代替要員の人件費や施設の整備費に対する助成等を行い、仕事と生活の両立を可能とする環境づくりを支援しています｡この結果、本年９月末でワーク・ライフ・バランス推進宣言企業、これが979社に上ることになりました。県下企業の環境整備は進んできている、と評価したいと思います。
　女性がライフプランを考えるためには、大学生等を対象にライフプランセミナーを開催したり、女性の多様な働き方等を紹介する事例集を作成・配布したり、妊娠・出産を正しく理解するためのＰＲ、リーフレットの配付等を行っています。特に若者が生涯に渡る生活設計に関心を深める取組を実施しておりますし、今後も続けます。
　今後とも、こうした取組を推進するとともに、本年７月には経済界・労働団体等で構成する「ひょうご女性の活躍推進会議」を設立しました。ここにおきまして、企業への専門員等の派遣やロールモデルの紹介など、先進事例を紹介し、ワーク・ライフ・バランスの一層の推進に取り組んでいきます。今後とも、若い女性がバランスの取れた将来の生活設計を描くことのできる環境の整備に努めたいと考えております。
　ただ、ご指摘のように、若い女性自身が、まずは就職、まずは働きたい、この強い願いを持たれていますので、それと生活・出産とのバランスをどうとっていくか、これもこれからの大きな課題だと認識しています。

【再質問口述内容】
　例えば兵庫県庁で、１年目の若手職員、女性職員が妊娠した場合、皆さんは諸手を挙げてすぐに喜んであげられるでしょうか。入庁したばかりなんだから、今から仕事をがんばってもらわないといけない、なんていうふうに思ったりしないでしょうか。
　先ほども申し上げましたが、平成26年度の女性の平均初婚年齢は29.3歳です。平成５年には26.1歳だったものが、毎年約0.2歳ずつ晩婚化が進んできていて、このような状態になって、これからも右肩上がりで伸びていきそうなグラフの形を示しております。これを反転させられるかどうか、これが晩婚化対策であります。
　晩産化もそうです。第１子の平均出産年齢は平成22年に30歳を超えました。これも高年齢化が止まりません。これを反転させることが晩産化対策です。
　兵庫県内の出産可能年齢の女性のうち、子どもを産む方々がどれくらいの割合かにつきましては、先ほど申し上げましたが、例えば平成12年で4.16％の方が妊娠･出産されましたが、平成26年では、3.8％となっております。少子化対策・子育て支援に、今まで随分力を入れてこられたと思いますが、出産可能年齢の女性が本当に子どもを産みたいと思う、その割合自身が減少しているわけです。つまり、子どもを産みたいと思う気持ちも減少しているのではないかというふうに思っているわけです。未婚率の上昇、そして非婚化についても同様であります。
　結婚や出産については個人の自由意思でありますけれども、晩婚化・晩産化を対策するというのは、もっと若い年齢のときに結婚し、そして子どもを産むということを、行政が奨励するということでありますので、早く結婚をし、子どもを産むことに対して社会全体でもっと喜んであげないといけないんじゃないか、そういうことが必要なんじゃないかと私は思っております。そういうムードや文化、風潮を作り出していくことが今重要なんじゃないかと私は思いますが、知事、どうお考えでしょうか。

【再質問答弁　井戸知事】
　基本的には、栗山議員ご指摘のとおりだと思います。
　ただ、なかなか実情は、反転させる対策を意識の面ではなかなか取りにくいので、我々としては、できることはある意味で研修をするということとあわせて、環境整備を進めていくということなのではないか、このように思います。
　一例を挙げられた、入社早々の女子職員が妊娠をしたら、それはなかなか感情としては喜べないのかもしれませんけれど、私は、職場の雰囲気としては、もっと男女比率が、女性の比率が高まってくる、このことが非常に重要なのではないか、このように思っております。そうすることによって当たり前のこととなる、その当たり前のことにしていくような対応をどう作り上げていくか、ということなんではないかと、こう思っているんです。
　もとより、そういう雰囲気を打破するために、育休代替職員の配置助成などをしているわけでありますけれども、これは環境整備の一つだと思っていますが、今申しましたように、出産や子育てに対して広く理解や協力をすること、それ自身は職場の中での男女比率をもっと、特に女性の比率を上げていくということが非常に重要なポイントになるのではないか、このように考えます。

（２）県庁における在宅勤務等の多様な働き方の推進

【口述内容】
　現場の人手不足感の拡大とワーク・ライフ・バランスの考え方の普及等により、現在企業においては多様な働き方が広がりつつあるようです。最近の報道では、大企業を中心に在宅勤務の導入が進んでおり、また中小企業では子育て中の女性が働きやすい職場を、コストを掛けずにつくろうと、「子連れ出勤」を認める動きも出てきているようです。「子連れ出勤」については、一部の大企業も注目をしているようで、実施企業への視察が相次いでいると聞きます。
　このように、民間企業では「子育てをしながら働ける環境」の取組みが進んでおりますが、翻って兵庫県の取組みはどうなっているでしょうか。
　県においては本年8月から、子育て中の職員の「在宅勤務制度」をスタートされました。都道府県では7例目になるということですが、現在は申し込みのあった本庁の46名の方がこの制度を利用するための事前登録をされ、在宅で資料作成やデータ入力などの業務にあたっていると聞きます。場所にとらわれない働き方、そして通勤時間を省くことで、ワーク・ライフ・バランスを図ることが可能になったことは大変歓迎すべきことでありますし、事前登録者46名中、男性が過半数の24名というのも大変嬉しいものでした。
　私は、少子化対策を意識した「子育てをしながら働ける環境の充実」のためには、多様な働き方を進めていくことが重要だと考えています。
　そこで、まずこの間進められてきた「在宅勤務制度」に対する評価と効果についてお伺いします。また、国では柔軟な働き方を実現する取組みの一つとして「フレックスタイム」の拡充について検討が進められているということですが、今後、フレックスタイムの導入も含め、県自身が「子育てしながら働ける環境づくり」に向けて、どのように取組む方針であるか、あわせてご所見をお伺いします。

【吉本副知事答弁】
　職員が仕事と子育てを両立できる環境を整えるためには、多様な働き方を推進する必要がございます。その方策の一つとして、本年8月から新たに小学校修了前の子を養育する本庁の職員を対象に、在宅勤務の運用を開始いたしました。これまで46名が利用登録を行いまして、2ヶ月間で25名の職員が延べ64回、制度を利用しております。
　利用した職員からは「時間的ゆとりができ、子どもと触れ合う時間が増えた」、「父親として朝と夕方に積極的に育児に関わることができ、妻の負担軽減にもつながった」などの意見がございました。職場からも、「職員が休むことなく勤務することで、業務の円滑な推進に効果がある」と聞いておりまして、仕事と子育ての両立に有用な制度であると評価をしております。また、県として先駆的な取組みを行いますことで、他の自治体や企業への普及効果も期待をしているところです。　
　一方で、制度運用開始後間もない状況ではありますが、利用頻度をみると、週1回程度の利用を想定していましたが、利用実績は当初想定を下回っております。その理由として、特定の日に在宅勤務に適した業務を集約するのが難しい、在庁の必要がある業務との調整がつかなかった等があげられております。今後の実施状況を踏まえまして、課題を検証し、利用向上につなげてまいります。
　子育てを支援するための制度につきましては、引き続き改善に努める必要があると考えています。その中でフレックスタイム制についても、今後、人事委員会勧告、国や他府県の動向も踏まえまして検討してまいります。併せて、これらの制度の利活用について、管理監督職の意識改革、休暇・休業制度を分かりやすく解説したガイド等によります普及啓発を通じまして、職員が子育てしやすい職場環境づくりに努めてまいります。

２　子どもを産み育てやすい環境づくりについて

（１）三世代同居・近居の推進

【口述内容】
　県におかれてはひょうご子ども・子育て未来プランに基づき、子どもの保育、教育、見守り等の様々な支援と事業を展開されているところであります。そんな中、現在の県の三世代同居・近居の推進について質問をしたいと思います。
　三世代同居・近居の推進は、二世帯住宅建設や親との近居のための住宅取得への補助など、子育て等のための総合的な支援策を求めているものです。三世代同居・近居の推進は、祖父母による子育ての見守りをはじめ、同居の場合は家計全体への経済的なメリットもあります。また、祖父母から孫への消費拡大にも繋がりますし、祖父母の介護も可能な状況を生み出します。
　県の調べによりますと、国予算の概算要求では、今のところ残念ながら三世代同居・近居の推進の具体化については動きが確認できないとのことです。しかし、政府が閣議決定した少子化社会対策大綱にも盛り込まれていた項目でもあり、必要性の高い施策であると考えられますので、国の支援を待たずに県独自でも早急に取り組むべきではないかと考えております。兵庫県内でも川西市や神戸市で同様の施策を展開しております。県の今後の方針についてお聞きをしたいと思います。

【井戸知事答弁】
　三世代の同居とか近居は、子育て支援や高齢者の生きがい・安心の確保などの効果が期待できます。また、多世代が住むことにより地域の活性化にも寄与するのではないかと考えています。
　県におきましても、まず県営住宅におきまして祖父母世帯と親子世帯の近居を実現する三世代優先入居を実施しています。二つに、住宅の立地が制限されている市街化調整区域において、地縁者が近居のために住宅を建てることを可能とする特別指定区域制度の活用を図ってまいりました。
　一方、平成25年度に内閣府が実施した調査によりますと、三世代同居や近居を理想の家族の住まい方と考えている人が５割を超えています。ということは、国においても、この３月に閣議決定された少子化社会対策大綱に基づき、今後、優遇策等の検討が行われるわけでありますが、三世代同居に対する期待が大きいということが言えます。
　県としましても、三世代同居・近居を希望する人がその希望を実現できるように、同居とか近居に伴う一時的な負担の軽減方策や、空き家の活用や改修を含めた住宅確保のあり方を具体的に検討したいと考えています。さらには、近所のおじいさんやおばあさんが少しの間、子どもを預かったりする地域の多世代助け合い事業などを、地域で子育て家庭を支える社会づくりに向けた取組として検討できないかなど、取組方策等について、総合的に検討してまいりたいと考えます。
　現在、住宅審議会におきまして、県の住宅施策の取組方針を定める住生活基本計画の改定作業にも着手しています。この審議会での議論も活用しながら、三世代同居・近居を含めた多様な住まい方の実現に向けて検討を行い、支援のあり方を含めて議論を深めてまいりたいと考えます。

（２）休日等勤務者のための子育て支援環境の充実

【口述内容】
　これまでの質問の通り、子育てをしながら働ける環境を支援する体制は日々拡大しているところだと思いますが、労働の現場からは日曜日や祝日、早朝・夜間の勤務などに対応する子育て支援の環境づくりにさらに力を入れて欲しいとの声があがっています。例えば、流通サービス業にお勤めのご夫婦で、夫婦が揃って日曜日勤務の場合などに、子どもをどこに預ければ良いのかと困っているというお声などです。24時間・365日営業という店舗が多く存在する現代では、就業の形態が多様化・複雑化しており、そういった声があがるのも頷けるところです。
　NHK放送文化研究所の国民生活時間調査2010によりますと、有職者の勤務曜日は平日88％、土曜56％、日曜36％となっております。平日が圧倒的に多いものの、土曜日においても有職者の半分以上、日曜日においても3分の1以上の方が働いておられます。日曜日や祝日、早朝・夜間に働かれるサービス業等に従事される労働者には女性も多く、切実な悩みを抱えておられるケースもあるようです。県内各市では休日保育を実施している市もありますが、政令指定都市の神戸市の保育所では182園のうち2ヶ所、中核市の姫路市では58園のうち2ヶ所、私の地元の西宮市では60園で1ヶ所と実施園が少ないのが現状です。それらの保育所は、普段預けている保育所でない可能性が高く、お子さんを連れて行く時間がかかったり、子どもの状況を保育士さんが把握されていないなど、いろいろな面で不都合が生じることがあるようです。
　保育所事業については市町が行うものですが、県は市町における休日等の保育ニーズをどう捉えているでしょうか。また、県下市町の取組状況について、どのようにお考えでしょうか。当局のご所見をお伺いします。

【井戸知事答弁】
　活躍する女性の事例を紹介した本がありますが、新宿歌舞伎町に24時間保育を実施している方の、いわば先覚者としての苦労の生涯経歴を読んだことがあります。そのように就業形態の多様化・複雑化あるいはひとり親世帯の増加に伴って、子育て家庭の多様なニーズに応える子育て環境の整備を進めていくことは、仕事と子育ての両立支援に不可欠だと考えます。
　昨年度の市町子ども・子育て支援事業計画の策定に当たって実施したニーズ調査では、例えば、神戸市や姫路市、西宮市では、日曜・祝日に保育所等を毎週利用したいとする保護者は2％前後、ちなみに西宮市は2.3％でありました。
　このような現状を踏まえると、全ての保育所を休日に開所するのではなく、集約して休日保育を実施することも現状では選択肢の一つとせざるを得ない状況にあります。休日や夜間の保育など多様なニーズにきめ細かく対応するには、一時預かり事業やファミリー・サポート・センター事業、延長保育事業などとあわせて活用していくのが適当ではないかと考えています。今年3月に策定した「ひょうご子ども・子育て未来プラン」においては、これらの事業について、平成31年度までに必要な事業量を確保したいと考えています。県としては、休日保育を含めた各種保育サービスが、保護者の意向を踏まえて、円滑に実施されるよう市町を支援してまいります。
　今後とも、ワーク・ライフ・バランスを推進する中で、仕事と子育ての両立を可能とする環境整備を進めてまいります。特に市町との連携に取り組んでまいります。

【再質問口述内容】
　休日保育ですが、実は伊丹市には5ヶ所所あります。人口は西宮市より少ないです。本当に休日保育のニーズが市町できちんと捉えられているのか、私は少し疑問を持っています。もっと本当はニーズがあるにも関わらず、休日保育を実施できていないんじゃないかと考えていますがいかがでしょうか。

【再質問答弁　井戸知事】
　休日保育については、ご指摘のように実態把握が十分ではないのもありますので、さらなる検証をしてみたいと思いますが、併せて無認可の保育所もかなり休日・夜間などについては機能している分がありますので、そのあたりの実態が十分に把握されていないということもあります。さらに検証を進めてみたいと考えています。

３　今後の経済成長政策について

【口述内容】
　「地域創生戦略（案）」の基本的目標の2つ目には「地域の元気づくりの基本的な目標」として、経済成長についての方向性と数値目標を掲げておられます。2060年の県内人口450万人を前提として、就業者の裾野の拡大・人材育成、産業・投資の活性化、世界化の推進、イノベーションの創出に取り組み、2020年度には県内総生産（GDP）が国を上回る成長率を維持することを目指し、2050年代には1.5％～2.0％程度の成長率を確保するというものであります。また、県民総所得（GNI）についても、「県民総所得に占める海外等からの所得の比率を高めていく」とあります。海外からの所得は、ここ10年間、概ね2兆円程度で推移していますが、さらに拡大していく可能性を私も感じているところです。
　このような経済目標を達成していくための鍵は、やはり「人・企業の世界化」ではないかと考えています。海外展開を積極的に進める県内企業の売上高、従業員数の伸びは、その他の企業の伸びを上回っております。その中でも世界に通用する産業、私は特にスパコン「京」やSPring-8など、世界最高水準の科学技術基盤や研究集積を活かした次世代産業分野を、兵庫県発で生み出せないかと考えております。
　具体的に言いますと、候補に掲げられている航空機や水素エネルギー、ロボット、先端医療などの分野ですが、研究を進め、事業化・産業化に結び付けていかなければなりません。そこで、それぞれの分野における事業化・産業化の可能性等を見越した、県としての支援策についてお伺いします。

【井戸知事答弁】
　経済のサービス化が進んでいる今日におきましても、ものづくり県であります本県の持続的発展には、製造業の競争的強化が不可欠だと考えています。つまり、サービスでは付加価値が創造されないからであります。地域創生戦略でも、ものづくりへのこだわりを掲げ、世界最先端の科学技術基盤やものづくり技術基盤等、兵庫のポテンシャルと優位性を生かして、航空機、ロボット、水素、先端医療などの次世代産業の創出・育成に向けた取組を強化して参ります。
　例えば、航空・宇宙関連産業、あるいは、次世代エネルギー関連産業の2020年における国内市場規模は、国の試算ではそれぞれ3.5兆円、10兆円と見込まれています。地域創生戦略では、県内の航空・宇宙関連産業、次世代エネルギー産業の2020年の売上高が2012年比で2.5倍以上となる目標を掲げ、それぞれ2,600億円、3,700億円と試算しています。県内企業はMRJやボーイング787、777X(トリプルセブン・エックス)など航空機の機材装置開発、水素ｽﾃｰｼｮﾝ設備の開発、水素発電の実用化、水素海上輸送の実証実験等にフロントランナーとして取り組んでいます。次世代産業への支援は、ひょうご経済･雇用活性化プランが目指す｢活力あるしなやかな産業構造の構築｣に向けた本県産業政策の柱になると考えています。
　今年度から展開している次世代産業雇用創造プロジェクト、これは国の助成を受けて行っているわけでありますが、研究開発から製品実用化、販路開拓、人材育成に至るまで幅広く支援しています。例えば、航空機では、国際的な認証制度取得とサプライチェーンの構築を目指しています。水素では、市場参入を希望する企業間のネットワークの構築を目指しています。ロボットでは、医療・介護ロボットの試作・実証実験を行います。端医療分野では、医療機器試作、スパコンを用いた創薬開発などを支援して、製品化、市場化の促進を図って参ります。
　今後とも、このような地域の元気を維持していくために、次世代産業分野の成長加速や市場参入を促進していきたいと考えております。

【再質問　口述内容】
　経済成長政策について、次世代産業の候補に挙げられている「航空機」について再質問をします。次世代産業の候補に挙げられている中でも、私は世界の大きな需要が目に見えている「航空機産業」について注目をしています。
　世界の民間航空機市場は、年率約5％で増加する旅客需要を背景に、今後20年間で約3万機が必要とされ、約4兆ドルの経済規模となると見込まれております。世界の航空機市場のトップはアメリカで約18.4兆円、続いてEUが約15.2兆円、カナダが約2.4兆円となっています。我が国の航空機市場は約1.1兆円にとどまっており、世界の航空機市場の中に占める割合はまだまだ小さいのが現状です。しかし逆に言えば、成長する世界の民間航空機市場でシェアを高めていくことにより、国内の生産規模は大きな成長の可能性を秘めているとも言えます。旅客需要が最も伸びるのはアジア太平洋地域と言われております。
　さて、機体需要が最も多いのはシングルアイルと言われる150席級の機体です。世界需要の多くを占めるボーイングは737、エアバスは320に注力しているとのことです。ボーイングやエアバスは、航空機の製造をモジュール単位で外注し、内外の優れた技術や生産基盤や装備品、エンジンのメーカーなどを企業再編等により自陣営に取り込んでいます。日本の航空機産業は、炭素繊維複合材料などの機体やエンジンについては一定の地位を獲得しつつありますが、重要性を増す装備品の開発等にどのように取り組むのかが課題とされています。また、その他にコスト重視、量産レート重視へのシフトにどう向き合うかが課題とされています。
　以上のような民間航空機市場に、兵庫県内企業を含む国内企業はどのように食い込んでいくのか。県を超えた企業同士の取り組みも必要となってくるかと思いますが、ご所見をお伺いしたいと思います。

【再質問答弁　井戸知事】
　航空機産業のこれからは、我々自身も非常に期待をいたしております。現に兵庫県内でも、何らかの関連のある企業が42社ございます。その42社の取組をさらに大きくし、またリンケージ性を深めていくということが非常に重要ではないか。その場合に、お得意さんとの関係ですから、地域制約があるわけではありません。そういう意味では、名古屋が中心になっておりますけども、地域を越えた提携、あるいは技術協力などが行われてしかるべきだ、このように思っています。
　そのために、私どもとしては、そのような、いわば部品を中心とする供給のサプライチェーンに参加をしていただいて、そして、それに関連する企業群を支援する、一つ一つの企業というよりは企業群を支援する、そういう支援の仕方を今検討していっているところでございます。
　また、最近のニュースでは、MRJの主翼の生産ラインを三菱重工の神戸造船所につくられるようなこととか、あるいは、川重の明石工場に航空機エンジンの開発部門が強化されるとか、というようなニュースも入ってきております。そのような意味で、これらとの関連も見定めながら、さらに推進を図っていきたい、このように考えているものでございます。おっしゃいましたように、737とか320は非常に定評のある飛行機でありますが、ぜひその一角にMRJが食い込んでくれることを是非期待をいたしております。

４　ひょうごの森づくりの推進について

【口述内容】
　県土面積の約67％を占める森林。これを県民共通の財産と位置付け、森林の機能回復を社会全体で支え、県民総参加で進めるため、県では「新ひょうごの森づくり」と「災害に強い森づくり」を推進しているところであります。そんな取組みによって大きな効果が出ている一方、課題も見えてきたところです。
　「新ひょうごの森づくり」では、「森林整備への公的関与の充実」と「県民総参加の森づくりの推進」を基本方針として、①森林管理100％作戦、②里山林の再生、③森林ボランティア育成１万人作戦、の三大作戦を中心に平成14～23 年の第1期、そして平成24年からはその成果を踏まえ、第2期対策を進められてきました。そのうちの「森林管理100％作戦」ですが、近年の実績が目標を大きく下回っております。
　第1期の10年間では目標の87,500haに対し、86,073haという間伐を実施し、達成率は98%となりました。しかし、第2期に入ってからの平成24年、25年、26年は、3か年の目標25,632haに対して実績は11,088ha、達成率は43％となっています。明らかにペースが落ちております。
　目標を達成できなかった理由として、「伐採や搬出等の効率の良い森林に間伐が集中し、条件不利地等で間伐が進まなかった」と、安全元気ふるさとひょうご実現プログラムの取組み状況に記載されています。また、昨年の決算特別委員会においても、平成24年、25年の実績が目標を大きく下回っていることについて質問されていますが、その際、環境創造局長から「森林組合等に対して、高密度路網と高性能機械を組み合わせた集約化施業によるコスト低減を図り、搬出間伐と切捨間伐をバランスよく実施するよう指導していくことなどにより、着実に推進していきたい」と答弁がありました。しかし、平成26年度の実績も芳しくありませんでした。
　達成できなかった原因を端的にいうと、国の方針に伴って、これまでの切捨間伐ではなく搬出間伐に転換したことが原因ではないかと私は理解しています。

　次に、話は変わりまして「災害に強い森づくり」についてです。
　森林の防災面での機能強化を早期・確実に進めるため、県民緑税を活用した災害に強い森づくりを第1期の平成18年～、そして第2期の平成23年以降も継続して取り組まれています。緊急防災林整備や針葉樹林と広葉樹林の混交林整備、野生動物育成林整備などであります。これらの整備により、急勾配の渓流における土砂災害の軽減や、野生動物による農作物被害の軽減などの効果が出ています。しかし、昨年の8月の集中豪雨により、丹波地域では流木・土石流災害、六甲山系では松枯れ跡地の表層崩壊が発生しました。そんな中、県は学識者による事業検証委員会から、第2期の事業効果検証を含む「災害に強い森づくりの新たな提言」を受けたところでありますが、今後はそれらを活かし、さらに効果の高い取組みの推進を願うところであります。

　このように刻々と状況変化する森への取組みは、現実味ある目標や考え方のもと、施策を検証・展開する必要があると思いますので、当局に今後の取組みについてのご所見を伺います。また災害に強い森づくりについては、県民緑税の延長について上程されているところでありますので、事業の内容・効果についてもご答弁ください。

【井戸知事答弁】
　森林管理100%作戦の推進にあたりましては、国の制度改正によりまして、平成24年度以降、間伐は搬出間伐が中心となり、作業効率のよい箇所に施業が集中しがちになりました。また、林業労働者数の減少傾向が続く中で、特に玉切りや集材等の作業手間がかかる搬出間伐に対応した人材の育成が若干遅れたなどが課題になり、ご指摘のような結果となっています。
　間伐進度を回復するためには、条件不利地等における作業道の開設支援が必要です。本年度から、昨年度末に目標達成した360kmに、490kmを加えた「森林間伐道850km整備プラン」を進めています。
　また、「林業三つ星経営体育成事業」によりまして、搬出作業に長けた現場技能者等を育成し、生産力の向上等を行ってまいります。このための、林業の技術研修等を行う「緑の雇用」事業による新規就業者の確保等にも取り組みます。
　「災害に強い森づくり」の成果ですが、緊急防災林の斜面対策では、土留工の設置により年間土砂流出量が8分の1に抑制される。渓流対策では、災害緩衝林等の整備により、流木と土石が捕捉され、下流被害を防止するなど高い防災効果が実証されています。
　一方、昨年8月の豪雨時には、谷上流部の急峻な斜面の崩壊に起因した流木・土石流災害が丹波地域で発生しました。また、都市部の六甲山系では、風化花崗岩や松枯れ跡地等の急斜面で表層崩壊が多発しています。
　このため、県民緑税の5年間の延長に際しまして、災害緩衝林等の整備箇所を拡充することとするほか、六甲山系での崩壊防止力を高める森林整備等に新たに取り組んでまいります。
　今後とも、森林の持つ多面的機能が持続的に発揮されるよう「ひょうごの豊かな森づくり」、「災害に強い森づくり」に取り組んでまいります。

５　民間集客施設等の耐震化の推進について

【口述内容】
　地域創生戦略案においては、2060年の兵庫の姿として、世界最高水準の防災基盤と防災意識を持つと記載されております。その将来像に向かって、県では建物の耐震化の推進に向けた様々な先進的助成制度を展開されているところであります。
　まず、建物の耐震化でございますが、平成25年に国レベルで集客施設の耐震化を目指す動きがあり、同年11月には建築物の耐震改修の促進に関する法律が改正施行されました。5,000㎡以上の大規模な病院や店舗、ホテル等の不特定多数の者が利用する多数利用建築物が対象で、耐震診断の実施と本年12月末日までにその結果報告を義務付けられているものであります。著名な観光地や温泉街を複数抱える本県への影響が心配されるところですが、これまでの間、県は市町とともに該当する建築物の耐震診断や耐震改修の設計、工事に対する補助を実施されてこられました。旅館・ホテルにおきましては該当の建築物28施設のほとんどで耐震診断は着手済みで、補強設計、改修工事に今後進んでいくと思われるとのことであります。
　しかし、次に問題となるのがそれより小さい規模の集客施設です。延べ床面積が2,000㎡～5,000㎡のいわゆる中規模の建物で、旅館・ホテルで言いますと、県内にはおよそ50程度あると見込まれております。これらは耐震診断の義務化の対象とはなっておりませんが、耐震基準に達しない建物については指示対象となることから、こちらも耐震化を進める必要があります。大規模の場合と比較し、これらの施設を運営する事業者には資金面での余力が少ないと思われますので、事業者負担を軽減する支援策が必要ではないかと考えております。
　また、大規模な場合は、避難所としての活用の協定を県や市町と締結すれば、防災拠点建築物として国の補助制度を活用し、手厚い支援を受けられますが、中規模には現在そういった補助制度はありません。
　今年度改定期限を迎える兵庫県耐震改修促進計画の見直しを行う中で、中規模の旅館やホテルの耐震診断や改修について、今後の方針やご所見をお伺いしたいと思います。
　また、関連する質問になりますが、以前から課題となっております個人の住宅の耐震化の推進についても併せてお聞きします。安全元気ふるさとひょうご実現プログラムの平成26年度の取組状況の中で、簡易耐震診断の実施戸数が目標5,500戸に対して3,096戸という結果になったとの発表がございました。居住者が高齢化する中、改修意欲が年々低下しているとの分析されているようですが、神戸市の取組のように対象物件にお住まいの方々を訪問するなど、所有者に対して積極的な取組を展開する必要もあるかと思いますが、ご所見をお伺いしたいと思います。

【井戸知事答弁】
　県としましては、平成25年度の法改正により耐震診断が義務付けられました大規模多数利用建築物について、耐震診断、補強設計、耐震改修に要する費用を助成しています。また、大規模なホテル・旅館については、災害時に避難所として活用されるものに対しましては、補助率や補助限度額を嵩上げする拡充措置をとっています。実質負担率は4/15になります。
　一方、中規模のホテル・旅館につきましては、法律上、耐震診断等の指示対象とはされていますが、義務付けまでは行われていませんので、補強設計と耐震改修に助成制度が設けられていません。しかしながら、災害時に避難所として活用されるような場合には、大規模と同じく、同様の公益性を持つということになりますので、今後これらの施設の耐震化の状況を踏まえた上で、検討してまいりたいと考えています。
　また、簡易耐震診断の実施戸数が目標に及ばなかった理由としては、ご指摘のとおり高齢化に伴い改修意欲が低下しているということが挙げられますが、その他、やっぱり制度が十分周知されていないということもあると考えられますので、今後、耐震改修の重要性などが高齢者にも分りやすいパンフレットの作成だとか、あるいは身近な市町や事業者による訪問説明など住宅所有者への直接的な働きかけを検討してまいります。併せて、県民の中には「事業者の選定が難しい」、「誰に頼んだらいいのか」というように戸惑いがあると聞いております。信頼できる事業者を県民が選ぶことができるよう事業者登録などの仕組みの構築も検討してまいります。
　これらの検討内容については、現在進めている兵庫県耐震改修促進計画の見直しの中で十分検討し、その結果を計画に反映することにしたいと考えています。

【再質問　口述内容】
　大規模なホテル、旅館についてですが、以前から指摘をされておりますように、耐震改修には億単位などの多額の資金を必要とする場合があると聞きます。
　しかし、そんな多額の費用をかけても収益に結びつくわけではないし、場合によっては、部屋に、部屋にですよ、筋交いが入ったりするなど、旅館の風情を壊すようなこともあるようであります。
　これまで進めてきた耐震診断は12月末に公表されるわけですが、要改修となっても、改修は義務ではありませんが、結果が公表される以上、現場では何もせずにそのままの営業は難しいという風に言われております。何も対策をしない旅館やホテルとは、旅行代理店や予約サイトも契約してくれないんじゃないかということで、現場は戦々恐々とされているように聞いております。
　耐震化の推進は、安全、安心を高める一方で、旅館業等の営業を大きく圧迫する可能性があるわけですが、そういう状況についてまずどう思われますか。全国的には廃業を決めた旅館やホテルがあると聞きますけれども、兵庫県内の状況はいかがでしょうか。また、中規模についてはもっと心配をしておりますが、どのようにお考えでしょうか。ご所見をお伺いしたいと思います。

【再質問答弁　井戸知事】
　ホテル等の大規模施設の整備ですが、私はやはり、おもてなしをきちんとするためには、安全の確保が十分にされていないといけないっていうのは、もうホテル、旅館の営業の基本、前提だろうかと思います。苦しくても頑張らなくてはいけません。それで、そのために、我々は最終的に助成としては4/15の負担で済むような対応をしておりますし、また低利融資の制度も作りましたし、限度額も上げました。さらに、条件緩和等については検討していきたい、このように考えています。それから、中規模施設につきましては、先ほどもお答えしましたように、やはり大規模が避難所などに指定されたら補助率を上げているのと同じような意味合いで、中小についてもそういう一定の公的役割を担うのであるとすれば、支援の道を講ずるということを検討していきたいと考えていますし、あと融資については、大規模と同様に、より低利で、安定した資金を供給するようにしていきたい。これによって、経営の安定との両立を図るようにしていきたいと考えているものでございます。

６　特別支援学校における就労支援について

【口述内容】
　特別支援学校では、障碍のある生徒の希望や特性に応じて適切な教育、指導が行われているところでありますが、その中でも卒業後を見据えた職業教育やキャリア教育、就労支援について質問をしたいと思います。
　会派での視察や調査などによりますと、平成26年3月卒業の本県の特別支援学校高等部卒業生の一般就労率は16.5％ということで、全国平均の28.4％に比べて大変低いということがわかりました。都道府県別でみても下から2番目という状況です。
　就労にあたっては生徒のやる気や希望に加えて、保護者の方々のお気持ちもあろうかと思いますが、特別支援学校の教育を通じて「生きる力」を育んでいるわけですので、自立と社会参加を実現するためにも可能な限り就労できるよう様々なサポートをしていかなくてはならないと考えます。
　県ではその対策として、就職支援コーディネーターの配置を県内3か所に拡充され、また地元企業の人事担当者等に授業を公開して理解を深めてもらうことを進めておられます。また、生徒の技能水準を公的に証明する認定資格の開発を進めるなど、兵庫県特別支援教育第二次推進計画に基づいて順次施策を展開されてきているところです。
　他方、障碍者の法定雇用率を達成している企業は県内の49.1％であるものの、雇用されている障碍者は年々増加しており、現在12,000人を超える方々が就労されています。障碍者を雇用されていない企業もまだ数多くあるわけですから、生徒たちの技能が活かされる業務のある企業に対し、受入れていただけるように、企業との関係を新しく築いていくことが必要だと考えます。そこで、県教育委員会の今後の方針についてご所見をお伺いします。

【高井教育長答弁】
　生徒が持てる力を最大限に発揮して、その能力と適性を活かして、自立するために、一人でも多くの卒業生を一般就労に結びつけることができますよう、一つには、生徒の就労意欲を高め、そして教職員や保護者の就労への意識改革を図ること、二つには、就労の現場で求められる力を身につけられますよう実践的な指導内容に改善をすること、三つには、企業に対して、教育活動の様子、生徒の実態についての理解、啓発に努めることが重要であると考えています。
　そのため、有識者や企業、保護者、就労支援機関などの関係者からなる推進会議を設置いたしまして、就労支援を充実するための方策を協議してまいりました。その一つとしては、今年度より取り組み始めた認定資格制度につきましては、先進事例も調査のうえ、比較的取りかかりやすいと思われますビルクリーニング及び喫茶サービス部門の開発を、現在行っています。この取組を通じて、就労への生徒の意欲が高まり、同時に保護者、教職員の意識改革も進みつつございます。また、企業関係者に授業を観ていただいて、就労の観点からご助言をいただいて、実践的な作業学習など、授業の改善も進めています。また、企業に対しては、県経営者協会を通じて雇用確保を要請いたしますとともに、生徒の障害特性や障害に応じて求められる配慮などを盛り込んだリーフレットを作成・配布し、理解・啓発に努めているところでございます。
　今後は、30年度までに一般就労率を3割近い全国平均並みに引き上げるということを目標として、平成29年度を目途に、認定資格制度のモデル構築を進め、以後、順次他の部門への拡大についても調査研究を進めたいと考えています。また、ご質問にもありましたように法定雇用率の引き上げに伴って、企業の方の関心も高まりつつあります。私どもへも、どういった所で、どんな人が採用できるのか、どこに相談したらよいのか、というようなご相談もございますので、生徒が獲得した職業能力を、企業側に情報発信をする一方、障害者雇用に向けた企業側のニーズを把握するという目的から、関係者間の情報共有を目指す、学校、企業、ハローワークのネットワーク体制を構築して、就労支援を充実してまいりたいと考えています。