兵庫県議会議員 くりやま雅史
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議会活動一般質問(兵庫県議会)2011年9月29日 一般質問内容

2011年9月29日 一般質問内容


【口述内容】
皆さま、おはようございます。民主党・県民連合議員団の栗山雅史でございます。質問に先立ちまして、東日本大震災および台風12号並びに15号において、被災された皆様にお見舞い申し上げますとともに、1日も早い復興がなされることを心よりお祈り申し上げます。
さて、私は本年4月に行われました統一地方選挙におきまして、西宮市より初当選をさせていただき、今回初めて一般質問をさせていただきます。至らぬ点があろうかと思いますが、県民の皆様のご期待にしっかりと応えられるよう、精一杯がんばる所存でございますので、議場の皆さま、最後までお付き合いいただきますようよろしくお願い申し上げます。それでは通告に基づきまして、4項目5問にわたって質問をさせていただきます。

1 県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みについて

【口述内容】
 質問の第1は、県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みについてであります。
 私は、この春の統一地方選挙で兵庫県議会議員に当選させていただく前は、西宮市議会議員として2期8年務めさせていただきました。その中で、阪神南県民局の方々と意見交換することもあり、阪神南県民局で実施されている事業のいくつかを知ることになりました。その中には、いくつか疑問に思うような事業がありました。それは、「これは本当に県民局がやらなくてはならない事業なのか?圏域の市でも同じようなことをやっているのではないか」という疑問であります。

 つい3日前、会派の重要政策提言のご説明にあがるため、阪神南県民局を訪れました。その際、県民局からあるチラシをいただきました。「絵本フォーラムin阪神南」というものであります。阪神南県民局主催で、10月22日に西宮市の大手前大学アートセンターで150人を対象に実施されるものであります。内容は、絵本の読み聞かせ講座、大型絵本絵巻の上演、人形劇などであります。
 絵本を読み、豊かな感情の醸成を目的に事業をなされることはとても素晴らしいことだと思いますが、このときも再び思いました。「これは阪神南県民局で積極的にやるべき事業だろうか」と。「西宮市や尼崎市や芦屋市でも、同様のことをやっているのではないか」と思い、私はすぐに調べてみました。例えば西宮市では、全く同じ事業というわけではないものの、絵本ということで関係するものとしては、「図書館での絵本えらびのための絵本ポケットというリストの作成」、「大型絵本の貸出し」、「絵本の読み聞かせ事業」、「西宮市子ども読書活動推進計画」、大谷記念美術館で開催の「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」などがありました。その他、県民局には「子育て関係」や「青少年育成関係」を中心に、市と同じような事業を実施しているのではないかと感じるものがありました。

 こういった「類似事業ではないかと感じるもの」に出会うたびに、私は、都道府県の役割、市町村の役割について考えるようになりました。それぞれの役割については地方自治法上に定められていることであり、ここであえて言う必要もないとは思いますが、都道府県は広域にわたる事務や、市町に関する連絡調整に関する事務、市町が処理することが適当でないと認められる事務などと定められています。一方、市町村は都道府県が処理する事務を除き、地域における事務等を処理することと定められています。特に最近、基礎自治体である市町は、これまでの市町村合併や中核市などへの移行によって、「地方自治や地方分権の主役は私たちだ」との自負を持つようになってきていると私は感じております。県は、広域自治体としての使命、役割を忠実に実行し、市町にやっていただくべきところは任せていくという、そういう姿勢でこれからは良いのではないでしょうか。

 地方分権が進んでいく以上、国と県との関係だけではなく、いわゆる県と市の「二重行政」、「類似事業」といわれるようなものも極力なくさなくてはなりませんし、県財政は現在大変厳しい折ですから、市町が実施している、例に出しましたような「類似事業」は、思い切って手を引くという選択をすべきではないでしょうか。行政サービスを受ける市民からも、「県も市も似たようなことをやっているような気がする」との声がよく聞かれます。

 県民局には、圏域の市町との類似事業の有無をきちんと把握していただき、県民局が本来果たすべき役割が何であるかをさらに認識しておくべきだと思います。そのために、例えば、県民局と市で似通った事業がないかを確認する協議会の開催、あるいは県民の声を定期的に収集していく取り組み、定期監査においてチェックを行うなど、県民局と市の類似事業の解消に向けた取組みを行っていく必要があると考えますが、県当局として現状をどのように認識し、今後どのように取り組んでいかれるのかご所見をお伺いします。(6分)

【答弁】
 基礎的自治体であります市町は住民に身近な事務、広域団体であります県は市町間の広域調整や専門的・先導的な分野への準備・対応をする、あるいは市町への行政運営への支援を担うということになっています。本県も、平成6年度以降、独自に県民に身近な669事務を、財源手当をしたうえで、市町へ権限委譲しています。
 新行革プランでも「県と市町の新たな関係の構築」を改革の視点に掲げまして、毎年度の予算編成の中で、市町に委ねる事業については、見直しを進めて委譲しているところです。
 例えば、市町に財源措置がされた「妊婦健康診査費補助事業」は市町の事務として委譲しましたし、市町事業として定着した市町ボランタリー支援事業などの事業についても、市町事業に一元化しました。一方で、有害鳥獣対策、小規模集落対策、地域再生など、新たな地域課題解決のための事業は市町と連携を図りながら協力して取り組んでいます。

 ご指摘の県と市町との「二重行政」とか「類似事業」ともみられる事業が県民局に多いのではないか、このご指摘はそのとおりだと思います。ただ、県民局がそれだけ県民に身近な事業を行っているということが一つあります。第2に、市町で実施されている事業であっても、県民局単位で広域的な規模で実施している事業、例えば○○大会、対象が県域全体にわたっている事業があります。それから、これがポイントとなりますが、その活動が広域的であったり、他の地域のモデルになりうる先導的な活動、これを支援して率先、普及に努めている事業があります。これがどちらかと言うと、類似事業ではないかという指摘を受けがちな事業です。従って、マンネリにならないように常に市町の動向や各種団体の活動を注視し、これを踏まえながら吟味していくことが必要になります。

 23年度から各県民局に地域の夢推進事業を創設し、多様な地域課題にさらに積極的に県民局が関わることになりました。そのような意味でも市町とも十分協議して進めなければなりません。今後とも、事業の先進性、モデル性、緊急性、専門性、広域性、人材育成など、県民局が行う必要性を十分チェックして実施してまいりますので、ご理解をいただくとともに監視の目も注いでいただきたいと思います。絵本フォーラムについて述べようかと思いましたが、これは省略させていただきます。

2 西宮北有料道路の早期無料化について

【口述内容】
 次に、地元選挙区西宮市の課題について取り上げます。質問第2は、西宮北有料道路の通行料早期無料化についてであります。
 この課題については、これまでに地元選出の議員が質問をされてきたところでございますが、現在の運営状況などを踏まえて、未来志向の質問をさせていただきたいと思います。

 西宮北有料道路は、阪神間北部と南部市街地とを結ぶ幹線道路として、盤滝トンネルを含む4.3kmを道路公社が整備し、平成3年3月から供用され、現在で20年が経過しています。この有料道路の総事業費は、南伸事業も含めて128億円で、平成32年度で借入金等の償還を終了し、平成33年3月25日から同有料道路が無料になる予定となっています。

 この道路は、峠を越える県道大沢西宮線よりも格段に利便性が高いことから、産業経済の発展に資することだけではなく、西宮市民の足ともいえる「さくらやまなみバス」が開通するなど、通勤や通学などにも使われる市民のまさに生活道路となっています。私は、多くの市民の方から「西宮南部市街地に出ていくのに、毎回往復500円を支払わなくてはならない。これは大きな関所だ。利益が出ているなら、出来る限り早く無料化してほしい」との強い要望の声を聞いております。また、西宮市からも要望事項として提出されている重要な案件でもあります。
 この道路の無料化は、西宮市民のまさに悲願であり、圏域の県民の皆さんにとりましても、早期に必要な取り組みではないかと私は強く感じております。

 現在の西宮北有料道路の収支状況を見てみますと、計画値を上回る償還状況であり、通行料収入から維持管理費や支払利息、損失補填引当金を差し引いたいわゆる収支差、これを償還準備金と呼んでおりますが、この償還準備金が平成22年度での累積で約105億円となっており、直近の単年度収支差、平成22年度の6億5千万円が今後も続くようであれば、計算上はあと4年で総事業費の償還がすべて完了することになり、平成32年度を待たずとも、少なくとも平成20年代後半には無料化することが可能になると考えております。

 しかし、無料化は償還計画上の計算だけで簡単に決断できるものではなく、無料化後に想定される課題、例えば、交通量の増大によって引き起こす渋滞などがありますが、既に渋滞が時折発生している同区間の前後の交差点対策などについてもよく考えておく必要があると思います。

 そこで当局にお尋ねします。県は今後の収支見通しや無料化後の課題をどのように考え、償還期限よりも早期に無料化することについて、どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見をお伺いします。

【県土整備部長 答弁】
 西宮北有料道路は、県道大沢西宮線の峠部分をトンネル化し、安全性の向上と移動時間の短縮を図る道路で、業務・日常生活・観光等年間約470万台の車が、幅広く利用しております。そのため、収入は計画を上回り、加えて新行革プランに基づく経費縮減対策により、償還準備金は計画よりも8億円多い状況にございます。
 今後の収支見通しについては、舞鶴道の無料化社会実験の廃止等により利用交通量が減少傾向にあること、耐用年数を超えたトンネル内の舗装や壁面のひび割れ等の大規模修繕が必要なことから、あと4年で償還が完了することは困難と考えております。
 また、無料化後の課題については、本道路への交通集中により、現在土日に渋滞が発生している船坂交差点など周辺道路への影響、道路公社から県に移行する管理体制等が考えられます。
 このため、今年の7月、県、西宮市、道路公社で構成する検討会を設置し、今後の利用交通量や施設更新費用等を見極めるとともに、無料化後の渋滞交差点への対応、消防や警察等と連携した安全な管理体制等を具体的に検討しています。
 今後とも、路面清掃等の維持管理水準の見直し等による経費縮減対策を推進しつつ、西宮市等と連携を図り検討会の議論を今年度内に取りまとめ、早期に無料化できるよう取り組んでまいります。

【再質問】
 今県土整備部長からご答弁頂きましたが、これは知事から本来答弁をいただきたいところでございましたが、ご答弁の中に、早期無料化につきましては、今年度に取りまとめて、そして早期に無料化できるように取り組むとご答弁頂きました。
 私も説明させて頂きました無料化は、現在のところ、平成33年3月25日でございますので、今からあと9年半ほどございます。20年がもう経過しておりまして、地域の方々にとってはいち早く無料化して貰いたいということで、私から提案するのも変ですが、早期にということでございますが、2年でも3年でもですね、早くして頂きたいと思っておりますが、そういったところについて年限は、はっきりなかなか言えないんでしょうけど、どのようなご所見をお持ちか、再度改めて知事にお聞きをしたいと思います。

【井戸知事 答弁】
 ご指摘のように、かなりの内部留保がありますが、その内部留保の内訳を吟味してみますと、修繕積立金とか、その他の対策のための部分もかなりあります。したがいまして、お答えもいたしましたように、かなり年数が経ておりますので、その完全な修繕等を、あるいは今後の対策なども講じた後、無料化したいと考えておりますので、そのような工事内容なども含めまして、検討会で十分に検討した上で、どれだけ無料化が短縮できるか。33年まで延ばそうという気は全くありません。できればですね、3年とか5年とか、短くしたいなという基本的な姿勢で検討を進めているということを申し上げておきたいと思います。
 何年になるかは検討会の結果でありますので、私の言ったことが左右しないように取り扱い頂いたら幸いです。

3 サイバー犯罪対策について

【口述内容】
 質問の第3は、サイバー犯罪対策についてであります。

(1)県警での取組状況について

 この質問の最初の項目として、県警での取組状況について質問をします。
 近年、社会全体のコンピュータ・ネットワークに対する依存度が増大する一方で、インターネットを利用した詐欺や名誉毀損、他人のID・パスワードを窃用する不正アクセスのほか、インターネット上での薬物等禁制品の密売、わいせつ図画の陳列、利殖願望につけ込んだ悪質商法等犯罪行為が増加し、国民生活、社会経済活動に大きな悪影響を及ぼしています。

 昨年のサイバー犯罪の検挙件数は、全国で6,933件と過去最多に上っており、中でも、インターネットを利用して個人情報をだまし取る「フィッシング」と呼ばれる被害が多発しておりますが、このフィッシング行為については、取り締まる法律すら制定されていないのが現状であります。

 サイバー空間は、もはや国民の生活の一部となって重要な公共空間を形成しています。しかしながら、サイバー空間は匿名性が高いことや犯罪の痕跡が残りにくいなどの理由から、犯罪が起こりやすい状況にあり、かつては想定していなかった犯行手口が相次いでいることから、インターネット上の治安は極めて不安定であると言わざるを得ません。

 こうした状況を解決するため、県警では今春、「サイバー犯罪対策室」を設置され、インターネット環境の浄化及び取締り等を強化するとともに、「大学生サイバーボランティア制度」を始められるなど、官民一体となった取組みをされていますが、サイバー犯罪対策室の環境はまだ十分な体制でないと聞きます。
 まず、サイバー犯罪対策室設置からこれまでの取組状況についてお聞きします。合わせて、大学生ボランティア制度の運用についてもその状況をお聞かせください。

(2)県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃への対策について

 次に、県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃への対策について質問します。

 今月19日に、三菱重工業の「神戸造船所」など、潜水艦や原子力発電プラント、ミサイルなどの研究・製造拠点計11ヶ所で、サーバー45台、パソコン38台がウイルスに感染し、情報漏洩の危険性が判明したと発表されました。セキュリティー会社による解析では、パソコンを外部から自由に操作できる「トロイの木馬」と呼ばれるウイルスも含まれており、また、製品や技術情報を抜き取られたり、複数の電子ファイルが盗まれたりする「標的型メール」が送りつけられるなど、被害が出ているようであります。

 この「標的型メール」を使った手口は、企業などに電子メールを送りつけてウイルス感染させ、秘密情報を盗み出す「サイバーインテリジェンス」と呼ばれるスパイ活動であり、先日の警察庁の調査では、本年3月以降、国内の民間企業に約900件送りつけられていたことが判明しています。

 また、今月17日夜から18日夜にかけて、人事院のほか政府インターネットテレビ、政府広報オンラインサイトで最大2時間余りにわたり、閲覧しにくい状態になりました。調査機関によりますと、複数のパソコンから大量のデータを送りつける「DDos(ディードス)攻撃」がなされたとのことでした。この「DDos攻撃」というプログラムは、ネット上で無料配布されていて、ITの知識が高くなくてもハッカーに変身できてしまうそうであります。さらに先月には、防衛省、経済産業省、警察庁のホームページもサイバー攻撃を受けていることが判明しています。サイバー攻撃に関連する報道は、現在も続いており、国民生活や社会経済活動に甚大な支障を生じさせるサイバーテロの脅威がますます現実のものとなってきています。

 そこで、兵庫県警としては、県庁をはじめとする県内の官公庁や県内企業などに対し、サイバー攻撃に対する防御策の指導等を行っていかなければならないと思いますが、どのような対策をお考えでしょうか。ご所見をお伺いします。

【兵庫県警本部長 答弁】
 サイバー犯罪対策についての質問のうち、1つ目の県警での取組状況について答弁申し上げます。
 県警察は、生活安全企画課の附置機関として30人体制の「サイバー犯罪対策室」を設置し、捜査態勢を整備したところ、サイバー犯罪の検挙人数は、本年8月末現在で昨年同期に比べて9人増加の64人となり、一定の成果を収めております。しかし、日々進化を遂げるサイバー犯罪に対峙するためには、捜査機材ハード面の整備を進めるほか、捜査員の育成にも努める必要があると承知しており、順次整備していく所存であります。
 県警察では、広く情報を収集するために、6月に県下52の大学に働きかけて「キャンパス・セーフティ・ネットワーク会議」を開催し、その場で「大学生サイバーボランティア」を募集し、現在119人の登録を得ており、大学生を対象にした意見交換会の開催やボランティアの二次募集も行なっています。また、9月から、民間業者に事業委託を行って「兵庫県サイバー犯罪防犯センター」を設置し、学生や教員等に対して、被害防止やサイバー犯罪の空間の健全化に向けて取り組み、県民が安全で安心してインターネットを利用できる社会づくりに努める所存であります。

 2つ目の県内企業や官公庁に対するサイバー攻撃への対策についてでございますが、県警察としては、平成15年9月警備部長を長とするサイバーテロ対策室を設置しており、近畿管区警察局情報通信部など関係部門とも密接な連携を図り重要インフラ事業者等への管理者対策等サイバーテロ対策を推進しているところであります。
 具体的には、兵庫県警察重要インフラ事業者連絡協議会の設置、重要インフラ事業者等への個別訪問による管理者対策サイバーテロ対策セミナーの開催等を通じて情報セキュリティの強化を図るとともに、事案発生時を想定したサイバーテロ共同対処訓練を実施して警察と事業者等との連携強化を図っております。
 また、通信情報技術を用いた情報収集いわゆるサイバーによるスパイ活動をサイバーインテリジェンスと言い、代表的な手口として「標的型メール攻撃」が挙げられるが、本年8月警察と情報窃取の標的となるおそれのある事業者等により情報共有を目的とした「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」を設置し、同ネットワーク等を通じた情報の集約、実態解明、注意喚起等による被害の未然防止と拡散防止に努めているところであります。
 県警察としては、今後とも警察庁と連携して事業者等におけるセキュリティ対策に関する指導の強化等サイバー攻撃による被害の未然防止等に総力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

4 若手医師の確保対策について

【口述内容】
 最後の質問項目は、若手医師の確保対策についてであります。
 県は公立病院を中心とした医師不足を補うため、平成19年度以降、若手医師を「後期研修医」や「地域医師」として採用し、医師不足が深刻な地域に派遣する制度を設けて、毎年10〜20人程度を募集してきておられますが、採用実績が5年間でわずか16人と低迷しているとの報道がありました。その原因としては、都会志向が強い若手医師を惹きつける決め手を欠いているからだとされています。研究環境や報酬など、若手医師にとって、魅力的で十分な制度となっていないのではないでしょうか。

 そもそも、兵庫県は医師の絶対数の不足と偏在が問題になっていました。特に偏在については深刻であります。国の直近の調査から算出しますと、約150万人が生活する神戸市の医師数は1,000人当たり2.9人で、約180万人が生活する西宮・芦屋・尼崎・宝塚などの阪神地域は2.2人となっています。一方、明石・姫路・赤穂などの播磨地域は深刻な状況となっており、この地域には約190万人が生活していますが、医師数は1,000人当たり1.7人という状況であります。
 しかし、播磨地域だけでなく、兵庫県には医師が充足していると言える地域はありません。県庁所在地の神戸市が人口1,000人あたり2.9人に対し、他の政令指定都市の福岡市で人口1,000人あたり3.5 人、大阪市では同3.3人、京都市では同4.0人と比べれば、かなり少ない状況であります。

 県養成医師の派遣制度では、僻地の医師不足を解消するため、自治医科大学及び兵庫医科大学、神戸大学、鳥取大学、岡山大学の各医学部において、僻地等勤務医師を養成し、市町からの要請に基づき、僻地の医療機関に派遣しています。現在では5大学で年間合計16名〜17名の養成枠を設けており、3億4500万円ほどの予算をつけられています。この派遣制度は、医学生として6年学んだ後、県職員として臨床研修2年、前期僻地派遣3年、後期研修2年、後期僻地派遣2年の9年間、県の指定する僻地医療機関等で勤務することとなっています。合計するとこの間15年を経ることになり、18歳で入学したとしても33歳になってしまいます。

 その後も、県は派遣制度で確保してきた若手医師たちを、僻地医療機関の医師として採用したいという思いがあり、平成21年度から年間50万円を上限とする研究・研修費を助成することを条件とした、県が指定する公立医療機関等に4年間派遣する「地域医師県採用制度」をスタートしています。しかし、現在、年間で20名を募集されていますが、その採用実績は残念ながら毎年1名から4名といった状況であります。
 9年間の僻地医療を経て、今度は都会の医療機関や、設備の整った医療機関、そして開業という選択をする医師が多くいるということではないかと思われます。また、そもそも、県養成医師の派遣制度で学び、9年間の僻地等勤務を終えられた方々は、毎年10名にも満たない状況でありますので、募集人員20名ということであれば、この制度は派遣制度の医師を確保するための制度というよりも、実質的には「外部の医師を確保するための制度」と言えるのではないでしょうか。そして、これまで募集人員20名に達していないのは、この「地域医師県採用制度」が、外部の医師にとって魅力的ではないということではないでしょうか。研究・研修費の助成だけで、4年間、県が指定する僻地の公立医療機関等に派遣される制度は、外部の医師にとって魅力的な制度ではなく、むしろ敬遠されがちな制度なのではないでしょうか。

 僻地の医師不足を解消するために、強い気持ちを持って外部からも医師を確保し、兵庫県の医師不足と偏在を解消していただきたいと思います。「地域医師県採用制度」の大幅な見直しを図る必要があると考えますが、今後どのように取り組んでいこうとされているのか、ご所見を伺います。
 また、医師不足が顕著な地域には、若手医師よりもベテラン医師の方が必要とされるのではないかと思われますが、ベテラン医師を確保するための新たな制度を創設することは考えていないのか、併せてお伺いします。

【井戸知事 答弁】
 後期研修医とか地域医師の県採用制度でありますが、医師の深刻な地域偏在・診療科偏在に対応するために、即戦力となる医師の確保対策のひとつとして制度化したものです。
 これまでに、この制度で平成19年度以降、16名の医師を採用して、県下でも医師の不足が厳しい但馬地域の公立病院への派遣や、ドクターヘリ事業の中心的役割を果たしていただいたり、救急医療に不可欠な麻酔科業務や、へき地医療に必要な総合診療に従事するなど、地域医療の確保の点で一定の成果を上げていると考えます。しかし、ご指摘のように、採用者が募集人員を大幅に下回っているのも事実です。
 その要因として、若手医師は、経済的支援よりも、より経験豊富な指導医による研修体制がほしい、あるいは豊富な症例数を重視するような傾向が強いと言われています。したがって、専門的研修を強化しなければなりませんし、継続して専門医や総合診療医としてのキャリア形成をサポートできる体制の確保が重要だと考えます。
 このため、大学等と協同して、「地域医療活性化センター」を作りたいと考えています。これは若手医師のキャリア形成のための研修や派遣先との調整を行いますが、第二に、循環システムを作り上げまして、ベテラン医師を地域に派遣して指導体制を強化しようというものです。これにより若手医師にもベテラン医師にも魅力のある人材養成・派遣の仕組みづくりとしたいと考えています。ぜひ実現を図り、今の研修医の皆さんのニーズに応えていきたいと考えています。ただ兵庫といたしましては、基本的に絶対的な医師不足の実情があります。といいますのは、医師の養成機関は神戸大学と兵庫医科大学、いま若干のプラスアルファがありますが、基本的に定員はそれぞれ100ずつ、200の定員です。一方、新規研修医はだいたい兵庫県で350人〜400人必要になります。その150人〜200人は外から来ているというのが、単純な物理的な不足であります。従いまして、このような構造をどのようにしていくかということは、基本的な課題であろうかと考えてもいるわけであります。
 しかし、直ちには対応できませんので、いま申しましたようないろんな工夫をしながら医師の確保に努めてまいりますので、よろしくご指導とご協力をお願いしたいと存じます。


【再質問】
 兵庫県の課題として、やはり(医師の)養成機関が必要ではないかと思うが、そういった構想についてどのように考えているかご所見お伺いします。

【井戸知事 答弁】
 医師確保の絶対的なボリューム不足なのですが、47都道府県で、1県1医科大学(設置)が、田中角栄総理の時に行われましたが、その結果、ニーズと供給力とがバランスがとれていないなかで、必ず1県1大学できたということがありますので、ある意味で全体としてのバランスはとれているということに、いまのところなっています。ただ、どうしても都市に偏在をしている。利便性の高いところに人材が偏在してしまっている。不足している農山村、過疎地域との交流があまりない。ここをどうするかというのが差し迫った課題であろうかということで、いろんな対策を講じさせていただいていますが、なかなかご指摘のような成果をあげていないという実情にありますので、それはそれとして見直しをしてニーズに応えられるような対応にしていきたいと思います。では、絶対量を増やすような対応があり得るのか、現時点では医師の新規大学は規制緩和の一環として議論されていますが、まだ解除はされていません。つまり増やすことは文部科学省としては、今の時点では認めてはいないという状況でございます。従いまして、そのような動きを私どもも常に注視しておりまして、ただ非常に財政負担が必要となるプロジェクトになると思われますので、私どももいま第二次行革プランを実施中でもありますから、そのような状況の中でも、県民の命を守るための施策として取り上げていくのかどうか、そのような全体の状況をよく見定めたうえで、また医療関係者や地域の方々とのご意見を十分調整したうえで、検討していくべき課題であると考えています。

前兵庫県議会議員 くりやま雅史 - 議会活動/一般質問(兵庫県議会)/2011年9月29日 一般質問内容

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